さまざまな業界や企業内のデジタル化が進む中、システムの「内製化」を行う大企業が増えています。
内製化とは、SIerやベンダーなど、専門技術と知見を持つ外部企業に依頼していたシステム開発や運用などの業務を、自社の社員や設備で行うようにすることです。内製化が進む背景には、外注ではカバーできない領域が増えてきたことにあります。
例えば、急速に変化する市場の動きに対応するためにシステムを刷新・改善する場合、外注先では臨機応変な対応が難しい上、対応までの時間に遅れが生じてしまいます。また、システム障害が発生した場合も、外注先との連絡に手間がかかり、障害への対応や復旧が遅れることがあります。中には障害が起きた原因すら分からず、検証も十分に行えないケースもあるかもしれません。
内製化を行えば、組織全体でITリテラシーが向上し、自社に柔軟な対応力を確保することが可能です。このため、「システムの内製化」が進んでいるのです。
内製化にはメリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、システム内製化のメリット・デメリットを3つずつご紹介します。
SIerやベンダーなどに外注すると、システムの開発、改修に時間がかかります。社内で協議(仕様の決定)を行った上でSIerやベンダーに依頼して、仕様を検証してからスケジュール作成や開発などを行うため、数ヵ月~年単位かかる場合も。
しかし、内製化をすれば、業務依頼時のプロセスがシンプルになります。情報共有や意思疎通なども効率的に行えますし、契約締結や内容調整も必要ありません。
また、時代とともに業務の内容は変化するものですが、内製化していれば、業務の処理方法やフローなどを常に最適化することができます。至急対応が必要な場合も、素早い対応ができるでしょう。
システムの開発や運用を外注してしまうと、社内にシステムについて熟知している人材がいないため、万が一のトラブルの時に誰も対応できません。また、ビジネスにおいてデータを十分に活用することも難しくなってしまいます。
しかし、内製化によって社内のスタッフがシステムに関わるようになれば、業務理解と実践的なノウハウを身に付けることが可能です。日々発生する課題の解決やさまざまな修正・変更に対応できるようになりますし、業務改善もスピーディーに行うことができるでしょう。
業務を外注するためには、さまざまな情報を委託先に提供しなくてはなりません。情報のセキュリティは外注先任せになることが多いため、漏えいリスクに頭を悩ませる企業も多いでしょう。
外部委託先だけでなく、日々手口が巧妙になっているサイバー犯罪から情報を守るためにも、内製化はおすすめです。内製化することで、必要なリスクマネジメントを自社で行うことができるため、問題点により対処しやすくなるでしょう。
システム開発を専門とするSIerやベンダーに外注する場合と比べて、システムの品質が劣る可能性があります。
専門業者は、システム開発に関するさまざまな専門人材を抱えています。また、各社で設けている品質基準をクリアした上で納品をするため、一定の品質が担保されています。
社内で品質を担保するためには、品質水準をしっかりと定めることが大切です。また、社内で人材育成を行い、設備なども整えなくてはなりません。
社内で人材を育成する場合、もともと知識や経験がある人材が社内にいればそれほど負担にはなりませんが、一から人材を育成する場合は、時間やコストがかかるでしょう。
外注する場合は、「外注費」として明確に区分され、コストの把握が容易に行えますが、内製化ではその把握が難しくなります。
人件費や設備、道具類などの社内費用は、一般的にだれでもアクセスできる情報ではない上、人件費を含めたコストがほかの業務と明確に区分できない場合も多いからです。
細かなコスト管理が難しいと、コスト意識が低下してしまう恐れがあります。このため、事前にどんな方法でコスト管理を行うか、ルールを作っておくことが大切です。
せっかく内製化に成功しても、一部の担当者に依存する状態では、業務がブラックボックス化してしまいます。また、その担当者が休職・離職した途端に、システムの開発、維持、メンテナンスがうまくいかなくなってしまう場合もあるでしょう。
このため、チーム内で役割分担を明確に行い、マニュアルやフローチャートで業務を標準化・見える化するなど対策を行うことが大切です。
DXを推し進める中、せっかく導入したシステムを使いこなせていない企業が少なくありません。デジタルアダプションプラットフォームとは、ソフトウェアを誰でも自律的に使いこなせるよう設計されたソフトウェアプラットフォームです。
システムの操作方法を順に表示する「ガイド」や、入力箇所にルールをポップアップ表示で簡単に説明する「ツールチップ」を表示することで、システムの利用促進や問い合わせ対応の削減などさまざまなメリットが得られます。
また、社内向けシステムをスピーディーかつ業務内容に合わせて柔軟に構築できるため、システムの内製化にも大きく貢献してくれるでしょう。